己れを愛するは善からぬことの第一なり。
修行のできぬも、事の成らぬも、過ちを改むることのできぬも、
功にほこり驕慢の生ずるも、
皆自ら愛するがためなれば、決して己を愛せぬものなり。
──西郷南洲遺訓 二十六条
(訳)
自分を愛すること、つまり自分さえよければ人はどうでもいいと考えることは、
人として一番良くないことである。
修行ができないのも、事業が成功しないのも、間違いを改めることができないのも、
また自分の功績を自慢し、驕り高ぶるのも、
人のことは考えない自己愛の強さからくるものであって、
決して、自分さえ良ければいいなどと考えて行動してはならない。
人はひとりでは生きていけない。
周りの人たちの助けがあってこそ生きていける。
事業もそうだ。
たとえひとりで起業したとしても、その企業が発展するには
従業員やお取引先からの支援が必要である。
だが、つい人は自分を愛しすぎてしまう。
少し事業が軌道に乗ると、自分の力を誇り、過信し、謙虚な心を忘れてしまう。
決して企業たるもの、経営者個人のためだけにあるものではない。
そこには従業員とその家族がいる。
お取引先もある。
企業を取りまく社会があり、社会に対する使命を果たさねばならない。
企業活動を通して、利益を社会に還元しなければならない。
自分さえ良ければ、他人はどうでもいいなどと考えることは、
人としても、経営者としても、 企業としても、一番良くないことである。