第四条、誰にも負けない努力をする〜地道な仕事を一歩一歩、堅実に弛まぬ努力を
経営の原点12ヶ条の第4条は「誰にも負けない努力をする」です。これは、スリーイーフィロソフィの「三大方針」のひとつでもあり、また「フィロソフィの根幹」12項目のひとつでもあります。
また「誰にも負けない努力をする」という項目は、「経営の原点12ヶ条」だけでなく、「六つの精進」にもあります。
「経営の原点12ヶ条」では4番目ですが、「六つの精進」ではトップ、つまり「我々が生きる上で一番大切なこと」とされています。
「経営の原点12ヶ条」と「六つの精進」の両方に出てくる項目は「誰にも負けない努力をする」だけです。フィロソフィの中でも極めて重要であることがお分かりいただけると思います。
稲盛塾長は「経営をしていく中でいちばん大事なことは『誰にも負けない努力をする』ことである」とおっしゃっています。
「言葉をかえれば『毎日一生懸命働く』」ことが経営で最も大事」
「このことを除いては、経営の成功も人生の成功もありえない」
「一生懸命に働くこと以外に成功する道はない」
「京セラ成功の理由の第一番目も、第二番目にも、第三番目も『誰にも負けない努力』をしたこと以外にはない」ともおっしゃっています。
これほどまでに「誰にも負けない努力」は、経営を伸ばすための絶対的な条件なのです。
目標を達成したい!と強く思ったら、あとはとことん努力することです。高い目標を達成するためには、通り一辺倒の努力ではかないません。人並みの努力をしただけで、うまくいかないと嘆くのはまだ早い。諦めるのも早すぎます。
熾烈な競争社会の中で生き抜いていくには、人並み程度の努力ではダメです。誰にも負けない努力が必要なのです。
それは途方もない努力が必要なのかもしれません。「そんなにあくせく働いてもしかたがないではないか」そんな悪魔の声が囁いてきますが、決して耳を傾けてはなりません。
地道な仕事を一歩一歩、堅実に弛まぬ努力を。そして、途方もない誰にも負けない努力をすることでしか、高い目標は達成できないのです。
「一生懸命仕事をしてますか?」と聞くと、ほとんどの人が「一生懸命やっています」と答えます。しかし「誰にも負けない努力」とは、そのような生易しいものではありません。
単に「頑張っています」「一生懸命やってます」ではダメなのです。ほどほどの努力では到底「誰にも負けない努力」をしているとは言えません。
「誰にも負けない努力」とは、誰もができるような、簡単なものではありません。「凄まじい努力をすること」「毎日、これ以上やったらぶっ倒れるほど努力すること」を意味しています。もし知的活動であるならば、「考えて考えて考え抜く」「寝ても覚めても考える」「四六時中考え抜く」ことを意味しているのです。
「誰にも負けない努力」の副題には、「地道な仕事を一歩一歩、成功に近道なし。堅実に弛まぬ努力を」とあります。
どんな偉大なことも地味な努力の積み重ねです。どんな地味な仕事でも、続けさえすればあっと驚くような偉大な仕事に成長発展します。
何事も一足飛びには成し遂げることはできません。一攫千金を狙うような仕事のしかたでは、決して成功することはありません。
どんな注文でも一個一個歩いてとっていかなければならないのです。
しかし現実はなかなかそれができない。目標は大きい。「こんなことで大きな目標が達成できるの
か」とどうしても思ってしまうのです。しかし、どんな偉大なことでも地味な努力の積み重ねです。
いっぺんに売上が上がらないか、もっと簡便な方法がないかと考えるところから間違いが始まるのです。
どんな巨大などんな目標であろうと、賽の河原の石を積み上げるような、気の遠くなるような努力の積み重ねなのです。
誰にも負けない努力をしていれば、いつの日か神様が「あの会社の従業員はあれほどの努力をしているのだから助けてあげよう」と思ってくれるのです。逆にいうと、神様が助けたいと思うほどの努力をしなければ、我々の行く手に成功はありません。
どんな偉大な仕事でも、些細な、地道な仕事の一歩一歩の積み上げです。地味な努力の積み重ねが偉大な成功を生むことを信じ、日々努力を積み重ねることが大切なのです。
そして、もう一つ大事なことがあります。
それは、一生懸命に働くことが人間性を磨くことになることです。
朝早くから夜遅くまで一生懸命に働けば、暇がありません。「小人閑居して不善をなす」といいますが、人間は暇があればろくなことを考えないし、ろくなことをしません。
ですから、忙しければ余計なことを考えなくても済みます。余計なことをしでかして失敗することも防ぐことができます。
つまり、一生懸命に働くことは、雑念妄念を取り去り、心を磨き、素晴らしい人間性、人格を形成することにつながるのです。
経営の原点12ヶ条の各項目は、それぞれとても大切なことばかりです。しかし、すべてはこの「誰にも負けない努力」がなければ台無しになってしまいます。 今一度、第4条「誰にも負けない努力をする」を学び、身につけ、実践していきたいと思います。