三重県といえば、伊勢海老や鮑などの海産物のイメージがあり、海の近くという印象らしいが、生まれた亀山市には海はなかった。
我が家は海岸から20キロほど離れており、小学校5年のときに学校にプールができるまではほとんど水泳をする機会がなく、泳げなかった。
父が夫婦岩で有名な二見ヶ浦出身だったので、たまにいく海水浴で平泳ぎを教えてくれたが、海は波があり、危険すぎて泳ぎの練習にはならなかった。
というわけで、小学校にプールができたときはうれしくてうれしくて、夏休みには毎日プールに通った。
当時はエアコンというものは普通の家にはなかったので、夏はとにかく暑く、プールにでも行かないとたまらいという理由もあったが、とにかく毎日プールに通ってなんとか平泳ぎができるようになった。
小学5年の夏休みの最後の日、8月31日のことだ。
今日で楽しいプールも終わり。
夏休み中、一日も欠かさずプールに通った成果を示そうと、平泳ぎ500メートルに挑戦をした。
もちろん休憩なしの500メートルだ。
1時間以上かかっただろうか、プールができるまでは泳げなかった私は、夏の終わりには平泳ぎで500メートルを泳ぎきることができるようになっていた。
今ではこんなことはめずらしくもなんともないが、当時私の小学校では画期的な出来事だった。
プールができたばかりの田舎の小学校では、500メートル泳げる生徒は他にはいなかったのだ。