山口下宿のすぐ近く、京王線中河原駅前にあるトンカツ屋のバイトを見つけた。
賄い付で時給600円。
その賄いとは、上質のトンカツにキャベツ大盛りの定食が仕事終了後に食べられるという、飢えた私にはこの上もなく魅力的なものだった。
仕事はといえば、簡単なキャベツの盛り付けをしたり、味噌汁やご飯をよそったり、それと皿洗いくらいで、とても簡単なものだった。
かんたん楽チンなそのバイトも、ひとつだけつらいことがあった。
それは、とても「ヒマだった」ことだ。
店の経営者(マスター)はボンボン育ちで、さして苦労もせずトンカツ屋を始めたらしく、お客さんを集める努力を怠っていた。
だから、滅多に店が混むことはなかった。
そうするとヒマな時間が多い。
ヒマだと、バイトの私はずっと何もせずに立っていなければならない。
余りにもヒマな時間が続くと、マスターがイライラしてくる。
別に何もする必要がないはずのに、イライラをバイトにぶつけてくるのだ。
あそこを掃除しろ、あそこを拭け・・・
つらいのはそれくらいだったのだが、そういう楽チンなバイトでも、ついにはクビを宣告されることになる。