バイト代を貯めてやっと買った日産ブルーバードUだったが、運転席のドアが外から開かなくなってしまった。
キーを閉じ込んで開かなくなったドアを無理やりこじ開けたので、「一度閉めると外からは開かないドア」 になってしまったのだ。
ブルーバードUはハードトップ(2ドア)だったので、残された唯一外から開くドアは助手席側だけだ。
私はしかたなく、降りる時は運転席側から降り、乗るときは助手席側から乗ることにした。
少し面倒だが、それしか方法がない。
しばらくの間はそうしていた。
でもこんな不便も、慣れてくるとたいした手間でもなくなってくるものだ。
さて、ある日のこと。
車を止めようとしたその道はかなり狭かった。
普通に路上駐車をすると車が通れない。
私は車が通れるように、ガードレールぎりぎりに駐車した。
ぎりぎりに駐車するのは結構得意だったので、ガードレールと車体の間は数センチしかないほどうまく駐車できた。
これで通行の妨げにはならない・・
用事を済ませてその後車に乗り込もうとした。
そして、私はその時初めて気付いたのだ。
この車、乗れない!
ガードレールぎりぎりに止めすぎて、助手席側のドアが開かないのだ。
そう、唯一開くドアである助手席側がガードレールに阻まれて開かないのだ。
これにはほとほと困り果てた。
この車にはもう乗れないのかぁ・・・
そこに放置して帰るわけにもいかないので、私は今度はウインドウのガラスを無理やりこじ開けることにした。
窓とドアフレームの間の少しのすき間にドライバーを差し込み、ぐりぐり、ぐりぐり・・・
もう、こうなったらドアもウインドウもどうにでもなれ・・
やっと無理やりウインドウをこじ開けて、私はベリーロール状態(走り高跳びでバーを包み込むように跳ぶ、あの姿で)で窓から車に乗り込んだ。