京都府政施行百周年記念として発刊された 『老舗と家訓』 には、家業永続の秘訣が次のように語られている。
1.名跡継承
誉れある家名、家紋、のれんの永久継承経営学では、のれんのことをGOOD WILL(好意・信用)という。
創業の精神、社会的使命観が高いほど、子・孫はそれを大切にして守り伝えようとする。
(反対に怠惰・朝寝・夜遊び・賭け狂いなどする者は、跡目相続人から外している)
2.祖先崇拝と信仰
祖先の祭祀や神・儒・仏三教を大切にし、天地・国家・社会、君臣・親子関係は報恩感謝で貫くこと。
3.孝道
孝は愛の至極、百行の基、万善の源であり、衆人に愛され、子孫の長久繁栄の根本である。
4.養生
早起きこそ息災、養生のもとという。
5.正直
金銀財宝は生活の手段に過ぎない。 私利私欲なき正路な働きが根本である。
6.精勤
六時には起き、天与地与の職分に励むこと。
7.堪忍
客の性格を見抜き、気持ちよく応対すること。 貧、欲、怒・身勝手・わがままはしないこと。
8.知足
心の富者になり、心の貧者になるな。
9.分限
超えるは驕り、及ばぬは吝嗇(りんしょく=けち)である。
10.倹約
三食麦飯、一汁一菜を守ること。
11.遵法
平和社会を守り、冥加冥利を与えてくれる御政道を遵守すること。
12.用心
火の用心、盗人用心。
13.陰徳
子孫長久の宝、天道冥加への付加。
14.和合
主人は仁義に、主婦は慈愛に徹すること。
15.店則
取引法・道徳の守り方・家族関係・奉公人関係から始め、人事関係・店内規則・役割分担・接客心得・販売仕入・生産・会計・その他衣食住細則に及んでいる。 特に注目に値するのは、家計と企業収支の分類を厳しくしていることである。
今も昔も、経営理念・経営哲学の有無が企業の生死を決する。
また理念・哲学があったとしても、社内に浸透していなければ、やがて瓦解は免れないのだ。