牛乳配達のバイトは結構給料が良かったので、車でも買おうかと考えていた頃のこと。
先輩のトラック運転手が、ハコスカGT−Rを売ってくれると言い出した。
ハコスカGT−Rと言えば、当時も今も幻の名車だ。
それも30万円だと。
さっそくその車を見に行った。
牛乳配達基地の駐車場にその「GT−R」は放置してあった。
車検が切れているらしい。
ドアを開けた。
シートはレカロのバケットシートだ。
車の中にはロールバーが入っていた。
エンジンをかけてくれと頼んだ。
すると先輩はスイッチをカチカチ言わせてエンジンをかけた。
キーを差し込んで回してエンジンをかけるタイプではないらしい。
乗ってみた。
すごい加速だ。
さすがGT−R・・・
と思ったが、実はただのハコスカ「GT−R」仕様。
つまり普通のスカGを改造しオーバーフェンダーを付け、「GT−R」に似せた車だったのだ。
しかし、見たこともないような太いタイヤに、シャコタン(今で言うローダウン)。
ソレックス、タコ足、デュアル。
爆音をたてて走り、見た目はGT−R。
これ、乗りたい!と思った。
強烈に魅力的な車ってあるもんだ。
とにかくカッコ良かった。
私はもう少しで買うところだったが、なんとか思いとどまった。
なぜ思いとどまったかというと、別の先輩運転手がアドバイスをしてくれたからだ。
その先輩が言うには、
買っても車検は通らないぞ。
リッター3キロは燃費が悪すぎる。
スイッチでエンジンをかけるというのは、おそらく盗難車だからだ。
冷静に考えたら、かなりヤバイ車だった。
あぶない、あぶない。